2012.4.29~30 【北アルプス・西穂高岳山行】(独標・PP・西穂高) 残雪のピークハント

前回の谷川岳山行から3週間。
連休前半は、天気が良さそうということで、29日~30日に西穂高山行を予定する。
当初の計画では、「西穂独標までのんびり残雪を楽しもう」というものだった。
今回登った峰々達
ところが、最近の積雪状況、ヤマレコの山行記録などを参考に、S隊長から送られてきた計画書は、1泊2日の日程で、初日は独標までの往復、2日目は独標を越え西穂高岳まで行こうというものであった。
残念なことに、今回はH君は諸般の事情で参加できないとのことで、S隊長と私の2名での山行となる。
写真はすべてクリックで拡大します
西穂高岳はWikipediaによると、「上高地や東西の方角から眺めると鋸歯状に岩稜が連なる山容が特徴である。無雪期の登山シーズン中に、新穂高ロープウェイの終点の西穂高口や上高地からの登山者で賑わう。西穂独標までは、穂高岳の入門コースとなっているが、西穂独標から山頂までは熟達者向きのコース、山頂から奥穂高岳までの区間の岩稜は北アルプスの主稜線上では屈指の難コースとなっている。
従来、周辺の山全体が穂高岳と呼ばれていたが、1909年に槍ヶ岳から穂高岳に初縦走を行った鵜殿正雄が、穂高岳のそれぞれのピークの山を北穂高岳、前穂高岳、奥穂高岳、西穂高岳と名付けた。西穂高岳は山域の南西端のピークで、その中で唯一3,000 mに満たない。」となっている。
以前から行ってみたい山のひとつであった。

・第1日目 4月29日 「独標偵察」
4時前に都内をS隊長運転の車で出発。
今回は、GW中でもありまた、かなり距離のある新穂高温泉まで行くということでいつもより早めの出発となった。
中央高速走行中に甲斐駒ケ岳を見る
快調に中央高速を松本で降り、阿房トンネルへ向かう。
新島々から沢渡までは上高地観光の車で結構混んでいたが、新穂高温泉の登山者用駐車場に予定より早く8:30に到着。
おお、北アルプスまでキター!
夏はいつも満車の駐車場も、この遅い時間でもかなりの空きスペースがありすんなり駐車。
装備を整え、新穂高ロープウェイ新穂高温泉駅まで15分ほど歩く。何泊停めても無料の駐車場なのでしかたないところ。

山麓の新穂高温泉駅(標高1,117m)から、ロープウェイを乗り継ぎ、終点頂上駅の西穂高口駅に着いたのが9時40分。予定より30分ほど早く登山口に着いた。
ロープウェイ駅へ急ぐ
ロープウェイ車内から笠が岳
駅ビルには屋上展望台が備えられており、穂高連峰が間近に望める。
これから我々が行く西穂高の峰々も全山が見える。その向こうには槍ケ岳も姿を覗かせている。
本日、天気は快晴。白い峰々が青空に映える。
あそこまで行くのか。
所謂、槍穂高であります
展望台を降り、駅ビルの外の「雪の回廊」を抜け、登山道へ進む。
それまでの雑踏から一気に抜け出し、清々しい無人の雪道を登り始める。

まずは標高2,156mの西穂高口駅から2,385mの西穂山荘までの1時間半ほどの行程である。
全行程が雪の樹林帯であるが、トレースがしっかりとありアイゼンなしでも歩きにくくはない。
下って来る人達はほとんどがアイゼンを付けている。確かに滑りやすい下り道では必要かも。
途中の絶好の展望ポイントなどを楽しみながら、最後の急登を詰め切ると森林限界を超える。
西穂高の岩稜
山荘に到着だ。1時間10分ほど掛ったが出だしとしては、まずまずのペースと言えるだろう。
西穂山荘に到着
時刻は11時半。相変わらず天気は快晴。
今日中に行けるところまで行っておこう。と相談がまとまる。
明日は天気が崩れそうな気配もある。
昼食を摂り、ザックを預け、サブザックを背負い、一路、西穂独標に向かって出発。
今回のルートを見やる
西穂高の山稜は多くの岩峰が稜線を形成しており、西穂丸山を越えるとその12のピークが続々と現れる。西穂高岳が第1峰、ピラミッドピークが第8峰、独標が第11峰である。
なんでも、西穂高、ピラミッドピーク、独標、丸山以外はピーク名が無いため、遭難時に場所を特定する目的で第12峰までネーミング。それぞれのピークには番号が書いてあり分かりやすく表示している。
山を守る人々の努力の賜物である。

丸山を越えると広大な雪原が現れ、長い登りとなる。
アイゼン・ピッケル装備の冬仕度ではあるが、気温が上がっており、夏山登山と変わらない暑さである。
前回の谷川岳の反省で日焼け対策はバッチリであるが、暑さまではどうにもならない。

西穂高第11峰 西穂独標 2,701m
暑さに汗ダラダラとなりながらもグングン高度を上げて1時間15分ほどで独標2,701mに到着。
時刻は13時30分を廻っていた。
ここ独標からの景色はまさに絶景。
見上げれば、西穂高の峰々。ジャンダルムから奥穂高。奥穂と前穂の間の吊り尾根。振り返れば、焼岳と乗鞍岳。
眼下には上高地と大正池が見える。
360度の大パノラマである。
景色に見とれて時刻も2時を回ってしまったので、今日はここで引き返すことにする。
奥穂高から前穂高への吊り尾根が美しい
西穂の主稜線 いちばん右が西穂高

眼下には上高地
西穂高方面に目をやると、ピラミッドピークや西穂高の頂上に人の姿が見える。
登山道にも下山してくる人が雪田で苦戦してる様子が見て取れる。
しばらくルートを偵察し、明日捲土重来を期すこととする。
14時20分下山開始。
3時過ぎには西穂山荘に無事到着。
独標からの下りはいきなりこんな
焼岳まで続く稜線
宿泊受付けを行い、18時の夕食まで休憩。
広くきれいな談話室兼喫茶室で、S隊長はすでにワインのボトルを開けている。
くつろぐS隊長


18時からの夕食もまずまず。ご飯と豚汁はお代わり自由である。

夕食後も談話室でワインの続き。
写真を撮りに来たというご夫婦?と単独行の山ガール?と思いもかけぬ盛り上がり。
この西穂山荘周辺で「岳」「ミッドナイトイーグル」の撮影があった話とか。 NHKの玉木宏さんは吹雪に閉じ込められて可哀そうだったとか。
もちろん、山の話とS隊長の武勇伝もおかずになりました。
大盛り上がりのまま、消灯時刻の9時までおおはしゃぎ。

西穂山荘の夜は楽しく過ぎて行ったのでした。

・第2日目 4月30日 「残雪のスノーピーク満喫」
5時起床。
外を覗くと天気はなんとか保っている。
いわゆる高曇りである。視界は良好。

朝食を頂き、装備を改め出発。
今日はもちろん西穂高岳山頂まで行くつもりである。
行程的には問題ない。夏であれば標準的なコースタイムで往復5時間というところか。

まずは独標まで。
今日はまだ、朝が早いので積雪が締まっており、アイゼンがよく効き歩きやすく、また暑くもないため昨日より良いペースで登ることができた。
高曇りの雪原を往く
独標の直下で、ライチョウに遭遇。
そう言えば天気が悪くなってきています。
昨日は晴れていたのでライチョウ君は現れなかったのですね。
冬毛から夏毛に変わろうとしているゴマ塩ライチョウ君。
目の上が赤いのでオスですね。
ゴマ塩模様のライチョウ君

今日はこの後、第2峰の辺りでもライチョウ君に会いましたが、その時はなんとライチョウが飛んだのです。
何かに驚いたのでしょうか。我々の頭上を結構な距離を飛翔して行きました。
恥ずかしながら、ライチョウが飛ぶのを見たのはこれが初めてです。
百戦錬磨のS隊長も2回目だと言ってましたので、結構珍しいことなのかも。
独標を通過する
独標を昨日より良いペースで通過。
ここから先は今回初のルートとなります。

今日、この同じ時間帯に同じルートを歩んでいるのは、我々も含めて13名。
5名のアンザイレンパーティと2人連れが2組、単独が2人。そして我々ということになります。
稜線の一本道ですので抜きつ抜かれつという感じで、そのうち顔見知りにもなりなかなか良い感じでした。

独標から先は、浮き石の多い岩場と雪道のミックスルート。当然、稜線上は雪庇の個所もあり、十分な注意が必要です。
急斜面の雪田を登る個所もあり、なかなか神経を使うルートでした。
雪庇がもうそろそろ落ちそうです

ピラミッドピークはもうすぐだ
ピラミッドピークには、独標から40分ほどで到着した。
ピラミッドピーク。2,750mの綺麗な三角錐のピークです。
西穂高第8峰であります。
西穂高第8峰 ピラミッドピーク2,750m

まだ7峰も残っているので、しばし休憩し先を急ぎます。
相変わらず岩と雪の悪い足場で、アップダウンを繰り返しながら登りますが、両側の開けた景色、適度なアップダウンのお陰であまり疲労を感じずに、次々と峰々を越えて行くことができました。
第2峰だか3峰 わからん
西穂高岳山頂(2,909m)に着いたのが、ちょうど9時。
西穂山荘から2時間45分ほど掛っていることになります。
私は大満足の結果ですが、S隊長単独なら2時間切りも可能だったと思われ、申し訳ない
西穂高岳山頂に到着。
アンザイレンして雪田を突破する5人組
槍だ!やり~~~!
西穂高山頂は狭い。
ちょうど、我々が登った時は瞬間最大人数で6名でしたが、全員立ちっぱなしの状態でした。
取りあえず順番に記念撮影などをしたのち、お楽しみの山座同定のお時間です。
奥穂高をバックに
ここで今日初めて槍ヶ岳が見えました。
奥穂高から連なる槍ヶ岳までの山々の連なりは大迫力。
そして、いつ見てもきれいな弧を描く吊り尾根。
笠が岳の稜線をたどれば黒部五郎や三俣蓮華、鷲羽などが良く見えます。
そして、立山と剱岳をなんとか拝むことができました。
高曇りでスカイラインが判然としなくなってきており、遠くの山はコントラストが淡く雲と同化してきています。
白山、御嶽山なども肉眼でなんとかとらえることができました。
これだけ見られれば、もう満足したと言うほかありませんね。
奥穂高から槍ヶ岳への稜線
吊り尾根も今日は雲と交わる
左奥が剱岳 右奥が立山(偏光補正) 
木曽御嶽が乗鞍の向こうに(偏光補正)

上高地 大正池もちょびっと

20分ほど頂上を堪能すると、アンザイレン5人パーティが登って来られたので、我々は場所を空けるために退散。(ザイルをアイゼンで踏んじゃいそうで怖いので)

来た道を降りる。
登って来る時に思った通り、降りる方が難所が多い。ところどころ後ろ向きに降りなくてはいけない壁面とか、ピッケルの本来の機能を使う雪面もある。
浮き石も多く、というかこの辺の岩のほとんどが浮き石じゃないかと思えるほどの状態である。
とても抱えられないような岩までグラッと来る。細心の注意が必要である。
結局、登りとほぼ同じ時間を費やし、西穂山荘に戻って来たのが11時40分頃となってしまった。
西穂山荘まで無事に帰って来た

西穂山荘では、昨日から狙っていた「しょう油ラーメン」と食後に「コーヒー」を頂いた。どちらもうまし。
西穂山荘ミヤゲを物色しながら、充分に休憩を取る。


ザックを担ぎ、アイゼンを付け、お世話になった山荘に別れを告げ、最後の下りに入る。
50分ほどでロープウェイ駅まで到着。
今回も無事に下界に降りた。
西穂山荘さんありがとう
樹林帯を降りて行く


帰宅後、調べると、4月29日の岐阜新聞に次のような記事が掲載されていた。
「高山署によると、北アルプスの遭難は、今年に入って同日現在で9件12人(昨年同期比8件11人増)と多発。特に西穂高岳の独標やピラミッドピーク付近での滑落事故が多いという。同警備隊飛騨方面隊の児島宏治隊長は「雪の状態によっては早期に引き返す決断をしてほしい」と話している。」

まさに我々が今回行った場所である。
それほど危険な箇所があったとは感じなかったが、今後も「安全第一」に「撤退する勇気」を持って山に臨もうと思う。

今回の教訓;下界は春でも、山は冬か夏かも分からない。


<山行記録>
日程:2012年4月29日(日)~30日(月) 1泊2日

同行者:Sさん

天候:
 29日:晴れ
 30日:晴れのち曇り一時小雨

当初計画:
29日:新穂高ロープウェイ西穂高口駅(10:35)-西穂山荘(12:15)-(昼食)-西穂独標(14:55)-西穂山荘(16:30)
30日:西穂山荘(6:00)-西穂独標(7:40)-西穂高岳(9:30)-西穂独標(11:15)-西穂山荘(12:30)-(昼食)- 新穂高ロープウェイ西穂高口駅 (14:35)

コースレコード:
29日:新穂高ロープウェイ西穂高口駅(10:10)-西穂山荘(11:23)-(昼食)-西穂独標(13:34)-西穂山荘(15:06)
30日:西穂山荘(6:14)-西穂独標(7:18)-ピラミッドピーク(8:00)-西穂高岳(9:00)-ピラミッドピーク(10:11)-西穂独標(10:36)-西穂山荘(11:39)-(昼食)-新穂高ロープウェイ西穂高口駅(13:43)

実歩行時間:
 7日:3時間17分
 8日:5時間25分

ライチョウ君 また来ますよ