2011/07/18

2011.7.16~18 【南アルプス南部縦走】 (悪沢岳・荒川岳・赤石岳) 雲上の稜線歩き

S君から今年の夏の山行計画がメールで送られてきたのは、6月27日であった。
添付されていた計画書の題名は「荒川岳ー赤石岳山行計画書」。

え~荒川岳から赤石岳ですか~?
2泊3日ではあるが、登山再開後、私にとっては、最も長く過酷な山行になるであろうことはすぐに分かった。
南アルプス南部は、関東では最も山も深く、アプローチも長く、そこへのアクセスも悪い。
中央アルプスのアクセスの良さ、北アルプスの整備されたトレイルとは一線を画す。
山容も一つ一つが大きくて深い。
その中でも、荒川三山から赤石岳を巡るルートは、人気のルートではあるが、体力的には相当タフなコースである。

正直な話、南ア南部に行けるとは思っていなかったので、嬉しさ半分不安半分と言うところであった。
しかも、今年は海の日3連休が7月16日~18日と早い。梅雨は明けていないことが十分に考えられる。雨の中の3,000mの稜線は厳しいなあとも思っていた。

・第1日目 7月16日 「予想通りのバテバテで樹林帯にあえぐ」

午前3時半。S君の車で出発。今回もS君とH君の3人での山行である。
東名高速を経由し、清水ICを降り阿部川を遡り、ワインディングロードをひた走り畑薙第1ダムの駐車場に着いたのが、午前8時。
畑薙駐車場は長蛇の列
ここから南アルプスの登山ベースである椹島へは、シャトルバスで1時間ほどであるが、すでに100人近くの長蛇の列ができている。
なんとか予定通りの9時発のバスに乗れたが、道は悪いし膝の上の荷物は重いし苦行の1時間であった。

椹島は、多くの登山口を有する南ア南部最大の登山ベースであるが、混雑はそれほどでもない。
北アルプスとはそもそも入山者の数が圧倒的に違う。

10時過ぎに椹島ベース(標高1,120m)を出発。
本日の目的地である千枚小屋(標高2,610m)を目指す。
標高差約1,500m、コースタイムで、5時間半程度のロングコース。
本日の行程は全行程が樹林帯の中であり、ほとんど展望のないコースである。
また折からの快晴もあり、気温も上がり、登山道の最初から始まる急登のきついこと。
今回はザックを大きいのに交換したこともあり、荷物も持ちすぎか?
ひたすら樹林帯を登り続ける
途中、清水平で昼食を摂るための休憩の頃には、もうバテバテでヘロヘロ。
完全な足手まといとなる。
荒川岳がちょっとだけ見えた
写真を撮りながらの山行を目指していたものの、この登りではほとんどカメラを出すことができなかった。
途中、見晴台、駒鳥池などを通過するも、ほとんど見てもいないというか覚えていない。
しかも、設定されたコースタイムより1時間ほど遅れてしまう。
ようやく、本日の宿泊地、千枚小屋にたどり着いたのは、18時ちょっと前となってしまった。

ザックを放り出し休憩

千枚小屋は2年前に火事で焼けてしまい、今は仮営業ということで、今年はこの日にオープンしたばかり。
さすがに人気の山小屋だけあり、かなりの混雑であった。
とは言え、収容人数は100名であり、北アルプスなどと比べるとこじんまりとしたきれいな山小屋である。
早々と寝床を確保し、まずまずの夕食を頂いた後、だんだんと暗くなっていく小屋前のテーブルで今日の反省会を行ったのであった。

明日は、今山行のメインコース。赤石岳までのロングトレイルが待っている。大丈夫か?

・第2日目 7月17日 「雲上の快適稜線トレッキング・・・」

朝4時。まだ暗い中を起き出し、千枚小屋前で夜明けを待つ。
千枚小屋は樹林帯の中にありあまり展望は良くないが、富士山方面、赤石岳方面は良く見える。
しばし、朝日に染まる雲海、赤石岳に掛かる月を堪能する。
富士山も今日は快晴
雲海に昇る朝日

赤石岳に掛かる月

今日の行程は、
千枚小屋→千枚岳→悪沢岳→荒川中岳→荒川前岳→荒川小屋→小赤石岳→赤石岳→赤石岳避難小屋という、コースタイムで7時間を超えるロングコースだ。

千枚小屋の仮食堂で朝食を摂り、6時前にいよいよ雲上の稜線トレッキングだ!と意気揚々と出発。
と思ったら、小屋を出た途端にいきなりの急登にあえぐ。
千枚ガレと呼ばれる付近から、ようやく森林限界を超える。暑かった樹林帯よさらばだ。
快晴の稜線を行く

40分ほどで千枚岳に到着。天気は快晴。ご機嫌だ。
ここからは本当に快適な稜線歩きとなる。高山植物も最盛期を迎えつつあり、ヘタリがちな気分を救ってくれる。
丸山を越え、荒川東岳(悪沢岳)には8時過ぎに到着。
3,141m。日本第6位の高峰である。

悪沢岳頂上から北アルプス全山が見えた
快晴の中、空気も澄んでおり、360度の大展望。北に目をやると、南アルプス北部の核心部から始まり、戸隠や妙高、北アルプス全山、御嶽山、白山、恵那山、中央アルプス全山、愛鷹山地、天城山、富士山、丹沢、奥秩父方面まで周囲ぐるっとありとあらゆる山が見えた。
これぞ至福の時である。
荒川三山の稜線を快適に飛ばす
おおざっぱに言うと、太平洋から日本海まで見えちゃうって感じです。
30分ほど頂上で景色を堪能し、先に歩を進める。
次に目指すは荒川中岳(3,083m)、荒川前岳(3,068m)である。

悪沢岳から荒川中岳までは、快適な稜線歩きとなった。
中岳避難小屋を通り過ぎ、荒川中岳の頂上に立ったのが10時15分。
ここまで4時間余りを要している。正直のところ、昨日の疲労からか私自身は今日もあまり体調は良くなくヘバリ気味である。

これぞ夏山 これぞアルプス

稜線上にあるかわいい避難小屋

稜線上にある中岳避難小屋を過ぎ、今山行中の荒川三山の最後のピークである前岳へ。

俗に東岳、中岳、前岳を総称して、荒川三山と呼ぶが、「深田久弥の「日本百名山」によれば、古い記録には「赤石山ハ絶頂三岐シ、荒川・鍋伏・赤石岳ノ三連峰ヨリ成レル」とあるという。深田も推測するとおり、このうち「鍋伏」が悪沢岳に、「赤石岳」が赤石岳に、「荒川」が前岳・中岳に該当すると考えるのが妥当である。これに従えば、現在の荒川三山は二つの山として数えられていることになり、その方が山容の実体には合っているとも考えられる。」 ウィキペディアより

深田先生に敬意を表し、私だけ前岳はパスし、一人荒川小屋へ先行する。
今日の最終目的地の赤石岳へ行くには一度荒川小屋まで下らなければならない。
荒川小屋は、標高2,610mの位置に立っているため、ここから500m下り、赤石岳へはまた500m登り返さなければならない。
赤石岳を遠望する 遠い・・・

赤石岳を遠望する。
本当にあそこまで今日中に行けるのか?
とは言え、ここはちょうど縦走路の中間地点。戻るも行くも同じこと。
ここは歯を食いしばっても赤石岳まで行かねばならない。

しばらくガレ場を下って行くと、今縦走中最も素晴らしい光景に出くわす。
このルート随一のお花畑に到着したのだ。
白と黄色の絨毯が広がる。
最近これほどのお花畑にはお目に掛っていなかったので、疲れを忘れ、ただただ見とれるばかり。
日本鹿除けの柵がしつらえられているものの、自然の力の凄さを思い知る。

お花畑をトラバースする

白と黄色の絨毯が広がる
いつの間にか、前岳の分岐で別れたS君、H君も追いついて来ており荒川小屋を目指し、下降を続ける。
12時前に荒川小屋に到着、昼食。コーヒーなどをいれ、小1時間の休憩。疲れを癒す。

目指す山頂はまだまだ遠い

大聖地平までのトラバース
残りの行程は約3時間、標高差500mの登りだ。
大聖寺平までのロングトラバースの後、一気に小赤石岳を登る。
このあたりで夏の天気にありがちな、「高山は午後は雲が上がって来る」という現象に遭遇。
稜線付近までガスが上がってくる
小赤石岳(3,081m)に到着する頃には、ちょうど稜線の辺りまでガスが上がって来た。
すると言い伝え通りに遂にライチョウが登場。
二つの群れを目撃するがどちらもヒナを連れており、親は忙しそうである。

ガスが出るとライチョウが出現
赤石岳(3,120m 日本第7位)の山頂に立ったのは15時45分。
あとは頂上直下に見える赤石岳避難小屋に降りるだけである。

赤石岳山頂でポーズを決める

赤石岳避難小屋。 ここは避難小屋である。収容人員は30名。素泊まりが出来る施設で管理人もいる。
基本的に食事は出ないし、頂上直下でもあり水もない。

山頂直下の赤石岳避難小屋
そのため、夕食と朝食の2食は自炊しなければならない。2食分の食事が荷物を重くした要因でもあった訳でここでこれが無くなるのはうれしい。

今日は珍しく風も無く天気は上々。
夕暮れの中、3,000mの稜線で食べる夕食はうまい。
隣の登山者との山会話も弾む、弾む。

赤石岳も夕空に
快晴の富士山も暗くなり始める
しかし、この避難小屋。昨日がシーズンインとは言え、この混みようは尋常ではない。
2階が宿泊場所になっているのだが、1階の廊下、食堂を全部つぶして登山者を収容している。
まさに足の踏み場もなく、ザックはザックカバーを掛けて小屋の軒先に置かざるを得ない状況。
とは言え、疲労の極にあるため支給された寝袋ですぐに安眠体制。

・第3日目 7月18日 「2,000mを一気降り」

小屋の名物オヤジが、出発する登山者に「今度はもっと空いてる時に来なよ~」と声を掛ける中、我々はゆっくりと小屋の外で朝食の支度をする。
気温はかなり低いが、今日も天気はまずまず。
狭い小屋の中より、小屋前のテーブルのが快適だ。
小屋のお姉さん?がお茶を入れてくれたり、ラッキョを出したりしてくれる。

今日は4時に起床するも、出発は5時過ぎとする。一番遅い方の出発であるが、赤石岳頂上での景色を楽しもうという出発時間設定である。

今日はとにかく降りるだけ。
登山ベースの椹島まで約2,000mの大下降が待っている。

小屋のご主人とお姉さん?と記念写真を撮って、小屋を出発。
まずは、赤石岳に登り返す。
昨日はガスが上がり、あまり展望はなかったが、今朝は雲は多いが、澄み切った大気の中、山々のシルエットが美しい。時間を忘れる時だ。
我々は後で知ることになるのだが、ちょうど我々が赤石岳に別れを告げる頃、「なでしこジャパン」が、ワールドカップを手にしていたのであった。
記念すべき1日であったのだ。
赤石岳から中央アルプスを望む

富士山頂には吊るし雲が
赤石小屋までは、お花畑あり、梯子場あり、赤石岳の眺望ありと変化に飛んだ下山となった。
休憩した赤石小屋も良い小屋でした。
管理人のお兄ちゃんも親切で「この先は水場ないので1ℓはここで水を汲んで行ってくださいよ。」と小屋に寄る登山者全員に声を掛けていた。
赤石小屋 きれいな山小屋だ

さようなら赤石岳
赤石小屋を出るとあとはひたすら樹林帯を下り続けるだけ。長い下りだ。
標高も下がり、かなり蒸し暑くなってくる。
11時42分。なんとか無事に椹島ベースに到着。
椹島ベースでバスを待つ人々
シャトルバスの出発時間まで1時間以上もあるので、ビールやコーヒーを飲みながら今回の縦走を振り返りつつ、我々の南ア山行は無事に終わりを告げた。
今回の山行では、個人的にはかなりバテテしまい、S君、H君に迷惑を掛けてしまった。
原因は、トレーニング不足と水の飲みすぎ、寝不足、タバコの吸い過ぎ、荷物多すぎ等々いろいろと挙げるれるが、日帰りならともかく泊まりが入る山行ではもっと体調管理に努めなくてはならないと痛感した。
ただ、今回の山行は、まさか行かれると思っていなかった南アの南部縦走ができたこと、季節がドンピシャで高山植物のお花畑を満喫できたこと、天気が良くて景色が堪能できたこと、大した怪我はしなかったこと、ライチョウも見れたこと等々、素晴らしい山行であった。
これも途中で私を見捨てなかったS君、H君のお陰であります。感謝。
なお、我々が帰った翌日、接近した台風による雨の影響で、畑薙第1ダムの駐車場から約300mほど奥の林道で路肩が欠損して、通行できなくなってしまったということを付記しておきます。
チングルマ
クロユリ

ミネウスユキソウ
<山行記録>
日程:2011年7月16日(土)~18日(月) 2泊3日

同行者:Sさん、Hさん

天候:
16日:晴れ
17日:晴れ
18日:晴れ

当初計画:
16日:椹島ロッジ(10:30)-登山口(11:50)-清水平(13:00)(昼食)-見晴台(14:30)-千枚小屋(17:40)
17日:千枚小屋(6:00)-二軒小屋分岐(6:25)-千枚岳(6:45)-悪沢岳(8:55)-中岳(10:45)-前岳(11:30)-荒川小屋(12:55)(昼食)-大聖寺平(14:05)-小赤石岳(15:45)-赤石岳(16:45)-赤石岳避難小屋(17:05)
18日:赤石岳避難小屋(6:30)-小赤石岳分岐(6:45)-水場(7:25)-富士見平(8:45)-赤石小屋(9:15)-樺段(11:35)-椹島ロッジ(13:20)

コースレコード:
16日:椹島ロッジ(10:12)-登山口(12:13)-清水平(13:55)(昼食)-見晴台(15:41)-千枚小屋(17:54)
17日:千枚小屋(5:50)-二軒小屋分岐(6:14)-千枚岳(6:32)-悪沢岳(8:18)-中岳(10:15)-前岳(10:46)-荒川小屋(11:51)(昼食)-大聖寺平(13:33)-小赤石岳(14:53)-赤石岳(15:45)-赤石岳避難小屋(15:53)
18日:赤石岳避難小屋(5:17)-赤石岳(5:20)-小赤石岳分岐(6:00)-水場(6:40)-富士見平(7:32)-赤石小屋(8:08)-樺段(10:32)-椹島ロッジ(11:42)

実歩行時間:
16日:6時間40分
17日:7時間23分
18日:5時間10分