2012.4.29~30 【北アルプス・西穂高岳山行】(独標・PP・西穂高) 残雪のピークハント

前回の谷川岳山行から3週間。
連休前半は、天気が良さそうということで、29日~30日に西穂高山行を予定する。
当初の計画では、「西穂独標までのんびり残雪を楽しもう」というものだった。
今回登った峰々達
ところが、最近の積雪状況、ヤマレコの山行記録などを参考に、S隊長から送られてきた計画書は、1泊2日の日程で、初日は独標までの往復、2日目は独標を越え西穂高岳まで行こうというものであった。
残念なことに、今回はH君は諸般の事情で参加できないとのことで、S隊長と私の2名での山行となる。
写真はすべてクリックで拡大します
西穂高岳はWikipediaによると、「上高地や東西の方角から眺めると鋸歯状に岩稜が連なる山容が特徴である。無雪期の登山シーズン中に、新穂高ロープウェイの終点の西穂高口や上高地からの登山者で賑わう。西穂独標までは、穂高岳の入門コースとなっているが、西穂独標から山頂までは熟達者向きのコース、山頂から奥穂高岳までの区間の岩稜は北アルプスの主稜線上では屈指の難コースとなっている。
従来、周辺の山全体が穂高岳と呼ばれていたが、1909年に槍ヶ岳から穂高岳に初縦走を行った鵜殿正雄が、穂高岳のそれぞれのピークの山を北穂高岳、前穂高岳、奥穂高岳、西穂高岳と名付けた。西穂高岳は山域の南西端のピークで、その中で唯一3,000 mに満たない。」となっている。
以前から行ってみたい山のひとつであった。

・第1日目 4月29日 「独標偵察」
4時前に都内をS隊長運転の車で出発。
今回は、GW中でもありまた、かなり距離のある新穂高温泉まで行くということでいつもより早めの出発となった。
中央高速走行中に甲斐駒ケ岳を見る
快調に中央高速を松本で降り、阿房トンネルへ向かう。
新島々から沢渡までは上高地観光の車で結構混んでいたが、新穂高温泉の登山者用駐車場に予定より早く8:30に到着。
おお、北アルプスまでキター!
夏はいつも満車の駐車場も、この遅い時間でもかなりの空きスペースがありすんなり駐車。
装備を整え、新穂高ロープウェイ新穂高温泉駅まで15分ほど歩く。何泊停めても無料の駐車場なのでしかたないところ。

山麓の新穂高温泉駅(標高1,117m)から、ロープウェイを乗り継ぎ、終点頂上駅の西穂高口駅に着いたのが9時40分。予定より30分ほど早く登山口に着いた。
ロープウェイ駅へ急ぐ
ロープウェイ車内から笠が岳
駅ビルには屋上展望台が備えられており、穂高連峰が間近に望める。
これから我々が行く西穂高の峰々も全山が見える。その向こうには槍ケ岳も姿を覗かせている。
本日、天気は快晴。白い峰々が青空に映える。
あそこまで行くのか。
所謂、槍穂高であります
展望台を降り、駅ビルの外の「雪の回廊」を抜け、登山道へ進む。
それまでの雑踏から一気に抜け出し、清々しい無人の雪道を登り始める。

まずは標高2,156mの西穂高口駅から2,385mの西穂山荘までの1時間半ほどの行程である。
全行程が雪の樹林帯であるが、トレースがしっかりとありアイゼンなしでも歩きにくくはない。
下って来る人達はほとんどがアイゼンを付けている。確かに滑りやすい下り道では必要かも。
途中の絶好の展望ポイントなどを楽しみながら、最後の急登を詰め切ると森林限界を超える。
西穂高の岩稜
山荘に到着だ。1時間10分ほど掛ったが出だしとしては、まずまずのペースと言えるだろう。
西穂山荘に到着
時刻は11時半。相変わらず天気は快晴。
今日中に行けるところまで行っておこう。と相談がまとまる。
明日は天気が崩れそうな気配もある。
昼食を摂り、ザックを預け、サブザックを背負い、一路、西穂独標に向かって出発。
今回のルートを見やる
西穂高の山稜は多くの岩峰が稜線を形成しており、西穂丸山を越えるとその12のピークが続々と現れる。西穂高岳が第1峰、ピラミッドピークが第8峰、独標が第11峰である。
なんでも、西穂高、ピラミッドピーク、独標、丸山以外はピーク名が無いため、遭難時に場所を特定する目的で第12峰までネーミング。それぞれのピークには番号が書いてあり分かりやすく表示している。
山を守る人々の努力の賜物である。

丸山を越えると広大な雪原が現れ、長い登りとなる。
アイゼン・ピッケル装備の冬仕度ではあるが、気温が上がっており、夏山登山と変わらない暑さである。
前回の谷川岳の反省で日焼け対策はバッチリであるが、暑さまではどうにもならない。

西穂高第11峰 西穂独標 2,701m
暑さに汗ダラダラとなりながらもグングン高度を上げて1時間15分ほどで独標2,701mに到着。
時刻は13時30分を廻っていた。
ここ独標からの景色はまさに絶景。
見上げれば、西穂高の峰々。ジャンダルムから奥穂高。奥穂と前穂の間の吊り尾根。振り返れば、焼岳と乗鞍岳。
眼下には上高地と大正池が見える。
360度の大パノラマである。
景色に見とれて時刻も2時を回ってしまったので、今日はここで引き返すことにする。
奥穂高から前穂高への吊り尾根が美しい
西穂の主稜線 いちばん右が西穂高

眼下には上高地
西穂高方面に目をやると、ピラミッドピークや西穂高の頂上に人の姿が見える。
登山道にも下山してくる人が雪田で苦戦してる様子が見て取れる。
しばらくルートを偵察し、明日捲土重来を期すこととする。
14時20分下山開始。
3時過ぎには西穂山荘に無事到着。
独標からの下りはいきなりこんな
焼岳まで続く稜線
宿泊受付けを行い、18時の夕食まで休憩。
広くきれいな談話室兼喫茶室で、S隊長はすでにワインのボトルを開けている。
くつろぐS隊長


18時からの夕食もまずまず。ご飯と豚汁はお代わり自由である。

夕食後も談話室でワインの続き。
写真を撮りに来たというご夫婦?と単独行の山ガール?と思いもかけぬ盛り上がり。
この西穂山荘周辺で「岳」「ミッドナイトイーグル」の撮影があった話とか。 NHKの玉木宏さんは吹雪に閉じ込められて可哀そうだったとか。
もちろん、山の話とS隊長の武勇伝もおかずになりました。
大盛り上がりのまま、消灯時刻の9時までおおはしゃぎ。

西穂山荘の夜は楽しく過ぎて行ったのでした。

・第2日目 4月30日 「残雪のスノーピーク満喫」
5時起床。
外を覗くと天気はなんとか保っている。
いわゆる高曇りである。視界は良好。

朝食を頂き、装備を改め出発。
今日はもちろん西穂高岳山頂まで行くつもりである。
行程的には問題ない。夏であれば標準的なコースタイムで往復5時間というところか。

まずは独標まで。
今日はまだ、朝が早いので積雪が締まっており、アイゼンがよく効き歩きやすく、また暑くもないため昨日より良いペースで登ることができた。
高曇りの雪原を往く
独標の直下で、ライチョウに遭遇。
そう言えば天気が悪くなってきています。
昨日は晴れていたのでライチョウ君は現れなかったのですね。
冬毛から夏毛に変わろうとしているゴマ塩ライチョウ君。
目の上が赤いのでオスですね。
ゴマ塩模様のライチョウ君

今日はこの後、第2峰の辺りでもライチョウ君に会いましたが、その時はなんとライチョウが飛んだのです。
何かに驚いたのでしょうか。我々の頭上を結構な距離を飛翔して行きました。
恥ずかしながら、ライチョウが飛ぶのを見たのはこれが初めてです。
百戦錬磨のS隊長も2回目だと言ってましたので、結構珍しいことなのかも。
独標を通過する
独標を昨日より良いペースで通過。
ここから先は今回初のルートとなります。

今日、この同じ時間帯に同じルートを歩んでいるのは、我々も含めて13名。
5名のアンザイレンパーティと2人連れが2組、単独が2人。そして我々ということになります。
稜線の一本道ですので抜きつ抜かれつという感じで、そのうち顔見知りにもなりなかなか良い感じでした。

独標から先は、浮き石の多い岩場と雪道のミックスルート。当然、稜線上は雪庇の個所もあり、十分な注意が必要です。
急斜面の雪田を登る個所もあり、なかなか神経を使うルートでした。
雪庇がもうそろそろ落ちそうです

ピラミッドピークはもうすぐだ
ピラミッドピークには、独標から40分ほどで到着した。
ピラミッドピーク。2,750mの綺麗な三角錐のピークです。
西穂高第8峰であります。
西穂高第8峰 ピラミッドピーク2,750m

まだ7峰も残っているので、しばし休憩し先を急ぎます。
相変わらず岩と雪の悪い足場で、アップダウンを繰り返しながら登りますが、両側の開けた景色、適度なアップダウンのお陰であまり疲労を感じずに、次々と峰々を越えて行くことができました。
第2峰だか3峰 わからん
西穂高岳山頂(2,909m)に着いたのが、ちょうど9時。
西穂山荘から2時間45分ほど掛っていることになります。
私は大満足の結果ですが、S隊長単独なら2時間切りも可能だったと思われ、申し訳ない
西穂高岳山頂に到着。
アンザイレンして雪田を突破する5人組
槍だ!やり~~~!
西穂高山頂は狭い。
ちょうど、我々が登った時は瞬間最大人数で6名でしたが、全員立ちっぱなしの状態でした。
取りあえず順番に記念撮影などをしたのち、お楽しみの山座同定のお時間です。
奥穂高をバックに
ここで今日初めて槍ヶ岳が見えました。
奥穂高から連なる槍ヶ岳までの山々の連なりは大迫力。
そして、いつ見てもきれいな弧を描く吊り尾根。
笠が岳の稜線をたどれば黒部五郎や三俣蓮華、鷲羽などが良く見えます。
そして、立山と剱岳をなんとか拝むことができました。
高曇りでスカイラインが判然としなくなってきており、遠くの山はコントラストが淡く雲と同化してきています。
白山、御嶽山なども肉眼でなんとかとらえることができました。
これだけ見られれば、もう満足したと言うほかありませんね。
奥穂高から槍ヶ岳への稜線
吊り尾根も今日は雲と交わる
左奥が剱岳 右奥が立山(偏光補正) 
木曽御嶽が乗鞍の向こうに(偏光補正)

上高地 大正池もちょびっと

20分ほど頂上を堪能すると、アンザイレン5人パーティが登って来られたので、我々は場所を空けるために退散。(ザイルをアイゼンで踏んじゃいそうで怖いので)

来た道を降りる。
登って来る時に思った通り、降りる方が難所が多い。ところどころ後ろ向きに降りなくてはいけない壁面とか、ピッケルの本来の機能を使う雪面もある。
浮き石も多く、というかこの辺の岩のほとんどが浮き石じゃないかと思えるほどの状態である。
とても抱えられないような岩までグラッと来る。細心の注意が必要である。
結局、登りとほぼ同じ時間を費やし、西穂山荘に戻って来たのが11時40分頃となってしまった。
西穂山荘まで無事に帰って来た

西穂山荘では、昨日から狙っていた「しょう油ラーメン」と食後に「コーヒー」を頂いた。どちらもうまし。
西穂山荘ミヤゲを物色しながら、充分に休憩を取る。


ザックを担ぎ、アイゼンを付け、お世話になった山荘に別れを告げ、最後の下りに入る。
50分ほどでロープウェイ駅まで到着。
今回も無事に下界に降りた。
西穂山荘さんありがとう
樹林帯を降りて行く


帰宅後、調べると、4月29日の岐阜新聞に次のような記事が掲載されていた。
「高山署によると、北アルプスの遭難は、今年に入って同日現在で9件12人(昨年同期比8件11人増)と多発。特に西穂高岳の独標やピラミッドピーク付近での滑落事故が多いという。同警備隊飛騨方面隊の児島宏治隊長は「雪の状態によっては早期に引き返す決断をしてほしい」と話している。」

まさに我々が今回行った場所である。
それほど危険な箇所があったとは感じなかったが、今後も「安全第一」に「撤退する勇気」を持って山に臨もうと思う。

今回の教訓;下界は春でも、山は冬か夏かも分からない。


<山行記録>
日程:2012年4月29日(日)~30日(月) 1泊2日

同行者:Sさん

天候:
 29日:晴れ
 30日:晴れのち曇り一時小雨

当初計画:
29日:新穂高ロープウェイ西穂高口駅(10:35)-西穂山荘(12:15)-(昼食)-西穂独標(14:55)-西穂山荘(16:30)
30日:西穂山荘(6:00)-西穂独標(7:40)-西穂高岳(9:30)-西穂独標(11:15)-西穂山荘(12:30)-(昼食)- 新穂高ロープウェイ西穂高口駅 (14:35)

コースレコード:
29日:新穂高ロープウェイ西穂高口駅(10:10)-西穂山荘(11:23)-(昼食)-西穂独標(13:34)-西穂山荘(15:06)
30日:西穂山荘(6:14)-西穂独標(7:18)-ピラミッドピーク(8:00)-西穂高岳(9:00)-ピラミッドピーク(10:11)-西穂独標(10:36)-西穂山荘(11:39)-(昼食)-新穂高ロープウェイ西穂高口駅(13:43)

実歩行時間:
 7日:3時間17分
 8日:5時間25分

ライチョウ君 また来ますよ






2012.4.8 【谷川岳山行】日焼け止めを忘れずに

東京地方に桜の満開宣言が出された4月の週末。
我々は、まだまだ完全な雪山の谷川岳を狙う。
天神尾根から見た谷川岳
週末の天気予報では上越地方は、土曜日よりも日曜日の方が好天が予想される。
必然的に山行日は日曜日と決まる。

山行前日の土曜日。twitterを覗くと我々同様に明日、谷川岳に行かれる人がいて、その人から「午前中より午後のが天気は良くなります。肩の斜面は数珠つなぎになりますよ」との情報をいただく。
そんなに混んでるのかと半信半疑ながらも、天候については心強いお言葉であった。

Wikipediaによると
「谷川岳は群馬・新潟の県境にある三国山脈の山である。日本百名山のひとつ。周囲の万太郎山・仙ノ倉山・茂倉岳などを総じて谷川連峰という。
頂部は二峰に分かれており、それぞれトマの耳(標高1,963m)、オキの耳(標高1,977m)と呼ばれる。元来この山はトマ・オキの二つ耳と呼ばれ、谷川岳の名は隣の俎嵒(マナイタグラ)に与えられていた。しかし、国土地理院の5万分の1地図の誤記のために、トマ・オキの二つ耳が谷川岳と呼ばれるようになってしまった。」とのことである。
ちなみにトマは「手前」、オキとは「奥」という意味らしい。
写真は全てクリックで拡大します。
谷川岳はこれまで800名ほどの遭難者を出しておりギネス記録にも載るほどの遭難多発の山である。
今年も3月23日から4月27日までの36日間は雪庇の発達した尾根筋、谷筋は入山禁止となっている。
中央分水嶺のために天候の急変しやすいこと、豪雪による雪崩、日本有数のクライミング場であることが主な原因だが、谷川岳と聞くと怖い山というイメージが一般的である。

ただ、谷川岳の標高は2,000mに満たず、天神尾根等の尾根筋の一般登山道は、ごく普通の登山道である。
季節と天気を選びさえすれば、決して危険な山ではないと断言できる。
谷川岳ロープウェイを使えば1,300mまで一気に上がれてしまうこともあり、誰にでも楽しめる山でもある。
また、森林限界が1,600m程度ということで、比較的低い標高でも多くの高山植物が楽しめるのも魅力である。

昔。もちろん夏であるが、谷川岳を訪れた時はロープウエイを使わず、土合駅から昇って降りた。
標高差は約1,300m。結構、厳しい登山であったことを覚えている。
天候が悪く、下山は西黒尾根をそれこそドロドロになりながら滑るというか落ちるように下ったのが一番印象に残っている。景色の記憶は残念ながら皆無。たぶん、視界悪かったんだろうな~。

今回は、天神平までロープウェイを使い、天神尾根を経て、肩の小屋、トマの耳、オキの耳まで往復というプランである。夏のコースタイムで4時間程度という、残雪期では最もポピュラーなルートとなる。標高差は約700m弱と日帰り登山としても手頃である。

都内を未明に抜け、外環から関越道を北上。
夜明けの西の空には沈みかかった満月が白く異常な大きさで見える。
これほど大きな月を見た記憶はない。異常気象か?

高崎-前橋間では、上州三山はもとより蓼科山、八ヶ岳、浅間山そして北アルプスまですっきりとその姿を見せている。
何十回も通った関越道であるが、蓼科山から赤岳まで八ヶ岳がこうも綺麗に見えたのは恥ずかしながら今回が初めてである。
なかでも、すっぽりと雪を被った浅間山は雲ひとつなく今日の晴天を予感させた。
関越自動車道から浅間山が見える
水上で高速を降り、土合口へ向かう。
途中、上りの坂道カーブでチェーンを装着したにもかかわらず車が180度回転するというアクシデントをなんとか乗り越え、8時過ぎに谷川岳ロープウェイ土合口駐車場に到着。
土合口駐車場
駐車場で装備を整え、一気に天神平1,310mまでロープウェイ(往復2,000円也)で上がる。
谷川岳ロープウェイに乗る


午前9時。気温0度。積雪4m。晴れ。
天神平は、リフト待ちのスキーヤーとボーダーでひしめいていた。
もちろん、雪山装備の登山者も多い。
天神平に到着

我々もアイゼンを装着。まずは天神山の尾根を目指し、登り始める。
道標がロープ沿いにしっかり立っているが、ロープの内側はスキーゲレンデとなっている。

天神尾根に向かって登り始める
40分ほど昇り、尾根へ出ると展望が一気に開ける。
これから目指すトマの耳、オキの耳も見える。なかでも俎嵒が圧巻だ。

これから行くピークを仰ぎ見る
雪山に来たんだとの実感が湧いてくる。
今年に入り、八ケ岳、大菩薩嶺、赤城山と雪山を登って来たが、今回はその締めくくり山行という位置付け。
天気も味方し、絶景を堪能する。
まだこの時間では頂上付近には雲が沸いている。
まあ、これも時間が経てば晴れるだろう。と楽天的に予測。

これから行く肩の小屋への道には多くの登山者が行列をなして登っていくのが見える。
昨日教えていただいた通り、数珠つなぎである。



天神尾根を進む。
結構きつい登りとなるが、多くの先人たちのつけてくれた踏み跡がきっちり残っており、歩き易い。
天気は確実に好転し、ほぼ快晴となる。
天神尾根のなだらかな雪面と青空のコントラストに目が眩む。


11時半過ぎに肩の小屋に到着。
多くの登山者が休憩・昼食を摂っている。
我々も小休止ののち、装備をチェック。
稜線の風と寒さに備え、アウター等を着こみ、せっかく持ってきたのでストックをピッケルに持ち替え、トマの耳を目指す。

10分ほどで、第一の目的地トマの耳(1,963m)に到着。
まずはオキの耳を眺める。



オキの耳への稜線の雪庇の張り出しが見事である。
この景色を見たい!というのが谷川岳を選んだ理由のひとつでもあった。

結構人が多いので周囲の絶景を一渡り眺め、オキの耳へ。
15分ほどでオキの耳(1,977m)の絶頂に到着。
本日の最終目的地完登である。


気温は-4℃。ほぼ無風。快晴。
谷川岳頂上は我々の足の下にあった。

一の倉沢に覆いかぶさる雪庇は美しいが不気味である。
この稜線に張り出した雪庇の大きさと迫力には圧倒された。
トマの耳を見ると多くの登山者が、微妙なバランスの山頂に立っているようにも見える。

快晴への感謝と山頂に立った達成感を味わいつつ記念撮影。
ここでなんと昨日twitterで情報を頂いた人にお会いできる。
おまけに写真も撮って頂きました。綺麗に写ってます。ありがとうございました。
彼はこの山頂までボードを担ぎあげている。
帰りは、天神尾根から熊穴沢を滑降する模様。ちょっと羨ましい。





一方、我々は自分の足で降りるしかない。
下りは写真を撮りながらのダラダラ下山となる。
何回もS君を待たせてしまう。
まいっかと思いながら、トマの耳への稜線、シュカプラ雪の風紋、エビの尻尾等の雪山ならでは写真を撮影しつつ、のんびりと歩く。







午後1時過ぎに肩の小屋まで戻り、遅い昼食とする。
薄着であることもあり、結構寒い。
昼食におにぎりを用意したのだが、あまりに冷たいので一個食べるとお腹が冷え切る。
スープとコーヒーで体を温める。



いきなり、S隊長が「ちょっと偵察に行ってくる」と肩の広場の反対側に向かう。
大きな雪の張り出しの向こうに越後三山が見えるとのこと。
雪原をトラバースして付いていくと、越後三山、尾瀬、日光方面の山並みが見事だ。

越後三山方面

燧ヶ岳と至仏山

日光白根山と皇海山方面

午後2時。下山開始。
雪原を降りて行く。
少し、登山道を外れたため、膝までの積雪に足をとられるが、これもなかなか乙なもんです。
依然快晴、全方位雪景色は尽きない。
快適な雪山縦走が続く。
天神尾根途中のスロープをボーダーが滑って行く。
熊穴沢方面へ何本もシュプールが伸びている
そして、あのTwitterさんも格好良く滑っていく。

アイゼンを履いた我々は、それを横目で見ながらひたすら降りる。

ふと、我々の周囲に人が消えたことに気づく。
あれだけ多かった人々はどこへ行ったのであろうか?
今は我々の前後、かなり遠目の位置に数パーティが居る程度である。
ちょっと不思議な感じがするも、我々がゆっくりと昼食を摂っている間に降りてしまったと結論する。
もしくはみんな滑り降りてしまったのか?

肩の小屋から30分ほどで熊穴澤避難小屋付近に到着。
避難小屋は見当たらない。来る時にも見当たらなかった。
標識あるいは目印、もしかしたら煙突が一本立っているだけだ。
この積雪の下に避難小屋は埋まっているのだ。
小屋1棟埋没させてしまうほどの積雪ということです。
いずれにしろ、冬季はここには避難できない。

小屋はこの下らしい

この後は立派な雪洞を見つけたり、谷川岳絶景ポイントで写真を撮ったり、ショートカットで雪壁を滑り降りたりしながら、3時半に天神平に到着。
谷川岳雪山山行を無事に終える。





谷川岳にはいろんな人がいた。
ゲレンデスキーヤー、スノーボーダー、山スキーヤー、テレマークスキーヤーは言うに及ばず、スノーシュー装着者、ワカン履き、雪中訓練者(滑落停止訓練)、ガイド付きアンザイレン組、雪洞掘り、そして我々のようなアイゼン履きの登山者。
それぞれがそれぞれのスタイルで快晴の谷川岳を楽しんでいた。
それだけこの山の懐が深いってことでしょう。

ひとたび荒れれば魔の山に変わる山でもある。
もしも冠雪直後であればシビアなラッセルを迫られる。
風が吹けば容易に登れる山ではない。
天候が急変すればたちまちホワイトアウトとなる。
我々も、もちろんそういう事態も想定して来ている(ホントか?)が、本日の快晴には本当に感謝である。
谷川岳さんありがとうございました。


下山後は恒例となった温泉(湯テルメ・谷川)でゆっくりと疲れを癒し、今度は180度回転することなく帰宅の途に着いたのであった。

次の山行は、GWに西穂高ですって。
「S隊長。独標までということでお願いします!」



最後に今回の反省。
この冬新調した冬用山靴はだめ!!
4回目の山行でも足が痛くなる。もう履き慣らしの段階は超えました。
とくに左足の小指付近の当たりは尋常ではない。そこを庇い過ぎたため右足の膝を下山時にやられた。
下山時最後のワンピッチはカニの横ばいみたいな歩き方で、だましだましって感じでした。
修理ができなければ別のを購入することとする。
更なる反省点。
それは快晴の雪山の日差しを舐めていたこと。
朝方の日差しはさほど強くなかったことから、日焼け止めを適当に塗ったため、顔の皮がむけてきてボロボロ状態。
登山翌日は、きったない真っ赤な顔で会社に行かざるを得なかったのでした。
一言言いたい「ゴルフなんか行ってねえよ~~だ!」

<山行記録>
日程:2012年4月8日(日) 日帰り
同行者:Sさん、Hさん
天候:晴れのち快晴


当初計画:天神平(9:20)⇒熊穴沢避難小屋(10:15)⇒肩ノ小屋(12:00)⇒トマノ耳(12:15)⇒オキノ耳(12:45)⇒昼食⇒トマノ耳(14:05)⇒肩ノ小屋(14:15)⇒熊穴沢避難小屋(15:15)⇒天神平(16:00)

コースレコード:天神平(9:23)⇒熊穴沢避難小屋(10:15)⇒肩ノ小屋(11:41)⇒トマノ耳(11:54)⇒オキノ耳(12:22)⇒トマノ耳(12:50)⇒肩ノ小屋(12:57)⇒昼食⇒熊穴沢避難小屋(14:39)⇒天神平(15:39)


実歩行時間:3時間48分

この稜線もいつの日か歩いてみたい