豪雨の縄文杉トレッキングから一夜明けた午前3時。
宮之浦港の宿の窓から外を見る。
満天の星空である。快晴だ!
急いでパッキングを開始し、午前4時に宿を出る。
宮之浦町を出て、安房の街、屋久杉資料館(バス停は今日も屋久杉行きの客でごった返している)、荒川別れ(右に行くと荒川登山口、左に行くと淀川登山口。見張りの人がこんな朝早くから一人立っている)を通り過ぎ、淀川登山口へひた走る。
ヤクスギランド、紀元杉を過ぎたあたりから道は狭くなり、鬱蒼と茂る屋久杉の中を走る。
林道自体は、きれいに舗装されており、非現実的な雰囲気を醸している。
運転するY君が「この道でいいの?」と聞く。
私は2年前に一度通っている道なので「大丈夫この道で合ってる」と言いながらも一抹の不安を覚える頃、ようやく淀川登山口に到着する。
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淀川登山口駐車場はまだ暗い |
午前5時の淀川登山口駐車場は、予想に反し、前夜から駐車しているのか夜露をかぶった車が1台駐車しているだけだった。
朝食を食べたり、次々と来る車を冷やかしたりしているうちに、駐車場はほぼ満車となる。
そして、最後にマイクロバスが2台到着。
驚くべきことにあのアミューズトラベルの仕立てた「宮之浦岳登山ツアー」である。
女性ガイド3人に率いられたオバさん約10人、男性ガイド2人に率いられたオジさん8人。
とにかく騒がしいこと甚だしい。準備体操やトイレや出発準備に大わらわ。
男性ガイドが「ロープもツェルトも非常食もあります!動けなくなった人は私が背負います」と大声で宣言。登山口を塞いで大騒ぎしている。他の登山者も遠巻きにして呆れ顔である。
不謹慎にも「いっそ、こいつらのところにダウンバースト。来ないかなあ」と、ふと思ってしまう。
このアミューズ隊が大騒ぎで行ってしまうのを待ち、我々も午前6時に出発する。
ヘッドランプを点灯して山道を登っていく。
昨日の荒川登山口と異なり、今日は出だしから山道である。ちょっとホッとする。
少し歩くとY君がついて来ない。待っていると先に行けと言う。足の調子が相当悪い様子。
昨日の縄文杉トレッキングのツケがついに回ってきたのだ。
一向にペースが上がらないので、いろいろ考えたが淀川小屋の手前でついに決断。
ここから引き返して貰うことにする。
Y君はこの先、宮之浦岳に登る機会はいくらもあるだろう。私には多分これが最後のチャンス。
午後3時に淀川登山口に迎えに来てもらうことにして、ここからは一人で宮之浦岳を目指すことにする。
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淀川小屋手前でY君と別れる |
淀川小屋でアミューズ隊が休憩している模様。姿は見えないが大声が暗闇に響いている。
私は淀川小屋での休憩を取りやめ、すみやかにパスする。
これで、本日淀川口から入った登山者の中では、ほぼトップグループに入った。
花之江河への途中で、先行者を抜き去る。
名古屋からのオジさん二人組、山ボーイ山ガールのカップル、韓国の若い女性二人組をかわし、
宮之浦登山組のトップに出る。
ちょうどその頃、ようやく夜が明ける。見事な快晴だ。
高盤台の展望台まで行って一休み。
この展望台は、大きな1枚岩でできていて、眺望も素晴らしいがスリルも満点。
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高盤台展望台より |
花之江河に、8時過ぎに到着。かなりいいペースだ。
前回はこの辺りには、鹿の群れがいたが、今回は晩秋のこととて高層湿原もただの水たまりとなっており、あまり綺麗とはいえない状況。鹿も見かけなかった。
山道も昨夜の雨でところどころ川となっている。
少し休憩し、先を急ぐ。
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花之江河より黒味岳を見る |
黒味岳分岐。
前回は、ここで宮之浦岳をあきらめ、黒味岳をピストンし、淀川口に下山した。
ここから先が勝負だ。
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投石平で一休み |
投石平、安房岳、翁岳を次々と通過していく。
大岩や奇岩が露出する山々を見ながらの稜線歩きは、全く疲れを感じない。
森林限界も1700m付近だろうか?本土よりも低いのは不思議だ。
稜線は基本的にはヤクザサが生い茂り、稜線上の見通しは最高である。
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稜線はヤクザサで覆われている |
時折、宮之浦岳の奥に聳える永田岳とその稜線が見え隠れし始める。
しかし、屋久島最高峰の宮之浦岳は未だその姿を見せない。
翁岳を過ぎるとそれらしき山容が見えてくるが、地図で確認するとそれは宮之浦岳の前衛峰の栗生岳であった。
実は、九州地方の高山ベスト8までが屋久島に存在する。
それを高い順に並べてみる。
1位:宮之浦岳(1936m) 今回の目的地
2 位:永田岳(1886m) 宮之浦岳のすぐ北に位置する山
3 位:栗生岳(1867m)今回通過・登頂
4 位:翁岳(1860m)今回通過
5 位:安房岳(1847m)今回通過
6 位:黒味岳(1831m)今回通過、前回登頂。
7 位:投石岳(1830m)今回通過
8 位:ネマチ(1814m)永田岳のすぐ北の山
となっている。
つまるところ、今回は屋久島連山の核心部の縦走であり、2位8位以外の山を堪能できた。
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栗生岳直下の巨神兵 |
巨神兵が守る栗生岳を通過し、ようやく宮之浦岳の頂上が見えてくる。こちら側からはなだらかな山容でなんかほっとする山である。
縄文杉・永田岳側から見ると結構険しい山に見えるようであるが。昨日は全く見えませんでした。
いよいよ最後の昇りにかかる。いよいよ山頂だ。
午前10:25。淀川口から登った中では、1番で宮之浦岳山頂に到着。所要時間は4時間25分。
コースタイムでは5時間なので、まあこんなもんでしょ。
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宮之浦岳への最後の登り |
頂上は360度の視界が得られ、屋久島全体が一望できる。
今日登ってきた山々の連なり、永田岳方面、そして縄文杉方面と素晴らしい景色が広がる。
縄文杉もすぐそこじゃんって感じ。もっとも縄文杉の辺りは今日も濃い雲に覆われていますなあ。
昨日、荒川口から縄文杉。今日、淀川口から宮之浦岳を踏破。屋久島連山縦走コースで、抜けているのは、ここから縄文杉の間の5.4kmを残すだけか。惜しい!!
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宮之浦岳頂上にて |
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永田岳方面 |
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縄文杉方面 雲の中が縄文杉か |
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山頂の道標 縄文杉へ5.4kmとある |
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登って来た山々 これから帰る方面の山々 |
宮之浦岳は、屋久島のどの町からも見えないそうで、逆に言えば、この頂上からは屋久島の山々しか見えないということになる。
幸いにもまだ雲は上って来ておらず、ほぼ快晴。
昨日の豪雨からすれば天と地の差がある。
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次々と山頂に登山者が到着 |
新高塚小屋から昇って来たという人と話をしているうちに、淀川口からの登山者も次々と登ってくる。
遠くにアミューズの大騒ぎ隊の声も聞こえてくる。名残惜しいが降りる時が来たようだ。
Y君に電話(稜線上は携帯が通じます)し、午後2時半に淀川登山口に迎えに来てくれるよう頼み下降に移る。時刻は11:00。下りは3時間半で降りられるとの目算である。(コースタイムは5時間)
登って来た道であるので、危険度は分かるし、未だ天気は快晴。ぐんぐんと軽快に下る。
オバちゃんに突き落とされた怪我も幸い打撲で済んだ。古傷の右膝の痛みもなく、下りの一歩を踏み出す時の怖い感じもしない。
今回はトレッキングポールもY君に渡してしまった。
そう言えば今年に入り、念のためにポールと膝サポーターを持参してはいるが、一度も使っていない。槍ヶ岳でも白馬岳でも使わなかった。
今回の山行を機にもう持参するのはやめようと決めた。
また、今回の宮之浦岳山行は、日帰りながらほぼ単独行。
単独行の自由さを堪能した。休憩も食事も写真も自分の好きな時に取れる。これはなかなか良い気分だった。
長期山行の場合は安全面も考えるとなかなか単独行とは行かないだろうが、日帰りならば十分に単独行の楽しめそうである。
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水清き屋久島 右は工事資材 |
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この橋の橋桁がかなりヤバい状態 |
なんてことを考えながら歩いて行くと、もう淀川橋。
朝渡った時は、真っ暗でよく分からなかったが、大工事中である。
6月だか豪雨で橋桁がえぐられ、その補強工事を行っている。墜落したヘリが運んでいたのもこの工事の資材であった。合掌。
この11月25日からは、通行禁止となり本格的に工事を行うようである。
資材置き場と化した淀川小屋で最後の休憩を取り、淀川登山口に急ぐ。
淀川登山口には予告通りの14:30に到着。
朝6時にここを出てから掛った時間は8時間30分。まずまずのスピードではなかろうかと自己満足。
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一番で到着をアピールしている |
Y君と無事合流し、紀元杉、千尋の滝やモッチョム岳を観光して、宿に向かった。
宮之浦岳は、一度は登りたい山であった。
前回屋久島に来た時も一応チャレンジをしたが、天候等もあり途中で退散した。
今回は季節を選び、その結果として、天気にも恵まれ、なんとか頂上に立つことができた。
疲労度も縄文杉トレッキングと比べれば、せいぜい半分くらいって感じ。
残念なのは、今から考えても、縄文杉トレッキング。
当初の予定では、まず宮之浦岳を日帰りでやり、その後、余裕があれば縄文杉に日帰りで行こうと考えていたが、宮之浦岳山行予定日が悪天候必至であったため、予定を入れ替えてしまったのが返す返すも残念であった。
今回の屋久島行きの二大目標であった
1.宮之浦岳のピークを踏むこと。
2.縄文杉を見ること。
については達成できました。
また、荒川登山口から縄文杉往復が約22km、荒川登山口から宮之浦岳往復が約16kmの歩行距離であり、2日間で38kmものロングトレールを踏破できたことは、今後の山行への大きな自信となりました。
<山行記録>
日程:2010年11月23日(火) 日帰り
同行者:なし
天候:晴れ
当初計画:淀川登山口(5:10)-淀川小屋(5:50)-花之江河(7:45)-黒味岳分岐(8:15)-投石岩屋(8:45)-翁岳(9:55)-宮之浦岳(昼食)(10:45)-翁岳(12:00)-投石岩屋(13:05)-黒味岳分岐(13:45)-花之江河(14:05)-淀川小屋(15:35)-淀川登山口(16:25)
コースレコード:淀川登山口(6:00)-淀川小屋(6:50)-花之江河(8:10)-黒味岳分岐(8:30)-投石岩屋(8:50)-翁岳(9:45)-宮之浦岳(10:25)-翁岳(11:30)-投石岩屋(昼食)(12:00)-黒味岳分岐(12:35)-花之江河(12:45)-淀川小屋(13:50)-淀川登山口(14:30)
実歩行時間:7時間15分