地蔵の頭から赤岳&阿弥陀岳を望む |
長かった緊急事態宣言がようやく解除され、懸念された台風16号も通り過ぎた秋晴れの10月3日。
8月の予定から伸び伸びになっていた八ヶ岳登山を実行した。
早朝、中央道を諏訪南ICで降り、赤岳の登山口である美濃戸山荘の駐車場に向かう。
早めに出たのにもかかわらず、赤岳登山に最も至便の美濃戸山荘(1,720m)の駐車場はすでに満車の立札が。道は閉鎖されている。
しかたなく、歩行時間は1時間増えるが、八ヶ岳山荘(1,502m)に駐車するべくスペースを探す。
しかし、駐車スペースが全く見当たらない。ここですら満車という緊急事態に陥る。
折しも緊急事態宣言明けの直後の日曜日の朝であった。
急遽、助手席に座ってボーッとしている同行者、歩荷志願兵のSM君に山荘に談判に行ってもらう。
すると山荘の主人が自分の車を止めているスペースに駐車して良いとのこと。
歩荷としてはあまり役に立たないSM君を思わず褒めちぎる。
八ヶ岳山荘横に駐車する。 |
紅葉にはちょっと早いこの時期でもコロナ明けの八ヶ岳は人気である。
ただ、山荘主人によれば、もう1、2時間すれば、昨日から登っている人が下山して来るので、駐車場はガラガラになりますよ。とのこと。
とりあえず、山荘横のベストポジションに駐車場所を確保でき、出だしは上々である。
今回は初日に八ヶ岳の主峰である阿弥陀岳、赤岳を登り、赤岳展望荘に宿泊、翌日に横岳、硫黄岳を経由して下山する計画である。
八ヶ岳は若い頃から、幾度となく訪れているが、これまでなぜか縁がなく未登の阿弥陀岳を登り切り、八ヶ岳全山踏破を達成する目論見である。
写真は全てクリックで拡大します |
まずは当初の駐車予定地であった美濃戸登山ゲートへ向かう。
車道を1時間歩き、登山ゲートに到着。
駐車場はけっこう空きがあるじゃないの。むかつく〜〜〜
車道を歩く |
ようやく登山ゲートに到着 |
ここから山道となる。
天気は快晴。気温もそれほど高くなく快適に山道を進み、行者小屋を目指す。
八ヶ岳っぽい風景 |
横岳付近の稜線が垣間見える |
行者小屋に着いたのは12時過ぎ。思いのほか時間が掛かってしまった。
ここで潔くプランBに予定を変更する。
今日の阿弥陀岳&赤岳を諦め、赤岳展望荘まで行くこととし、明日赤岳と阿弥陀岳を登り、御小屋尾根を降るというプランに変更。残念だが横岳と硫黄岳は今回は断念。
このプラン変更により、今日の行程に余裕ができたため、行者小屋前の休憩所のベンチにてグダグダとランチ。
大同心、横岳、赤岳、阿弥陀岳の写真などを撮りながら大休止。
行者小屋前の休憩所は大賑わいのほぼ満席の状態。
これから登ろうという人は少なく、降りる人がほとんどであった。日曜の昼であるからなあ。
行者小屋 ランチもやってます |
逆光の阿弥陀岳 |
あとは、地蔵尾根を登り切るだけである。ゆっくり行こう。
岩稜の急登はきつかったが、1時間半ほどで2,720mの赤岳主脈稜線上の地蔵の頭に出る。
500mほどをほぼ直登したのだが、稜線に出た時には、正直「今日、阿弥陀岳はやめて本当に良かった。阿弥陀登って、その後赤岳越えるのはどう考えても無理。途中の中岳あたりでビバークするしかなかったなあ」と胸を撫で下ろしたのであった。
秋の気配が少しだけ |
大同心の向こうに見えるは硫黄岳 |
赤岳稜線上の地蔵の頭に到着 |
地蔵の頭に着いたのが午後2時半。まだ日は高い。
私はヘロヘロなのに歩荷志願兵SM君は体力がまだ余ってる様子。
「空身で横岳でも登ってくれば。ここで待っててやるから」と言うと、ザック放り投げてほんとに行っちゃった。
まあ、天気も良いし風も無いし寒くもないし、ここから見えるし、まあいいか。
しばらくSM君の登っていく姿を眺めていると、なんとブロッケン現象が現れた。
無風であるが、赤岳稜線に雲が湧き、初秋の太陽がブロッケンを作り出したのである。
しかも、これほど綺麗な虹色のブロッケンは初めて見た。
日本ではこの現象で出現する影は阿弥陀如来と言われており、大変ありがたいものなのである。合掌。
横岳なんて行かなくて良かった。
これだけ綺麗なブロッケンは初めてだ |
稜線に寝そべり、アルプス全山の展望を楽しみ、ブロッケンを眺め、登り来る人と情報交換しながらSM君を待つ。
途中2回ほど携帯で安否確認を行うが迷惑そう。
1時間ほどで無事にSM君が戻る。
雲を引く赤岳 奥には阿弥陀岳が見える |
奥秩父方面を望む |
横岳の左に蓼科山がちょこん |
横岳は、どこが山頂かは微妙だが、三又峰付近までは行ってきた模様。
ブロッケンを教えてやるが、それほど感銘は受けなかったようだ。
ま、無事に帰ってきたのでいいか。
ここから今日の宿泊地である展望荘までは5分ほど。
宿泊手続きを済ませ、個室へ入る。
赤岳展望荘は赤岳の主脈稜線上2,722mにある山小屋である。
最大収容人数は200人の結構大きな山小屋であるが、本日の宿泊客は20人ほどか。
10年ほど前に1月に来た時の方が混んでました。
コロナ禍で、完全予約制となり過密な雑魚寝が消えたことは、採算さえ合うのであれば、今後の山小屋の行く末を良い意味で示しているのではないかと思われる。
まあ、今年は押し寄せる外国人がいないだけでも快適ではありますが。
山荘から赤岳を見上げる |
赤岳展望荘フロント玄関 |
展望荘裏から赤岳を望む |
阿弥陀岳の肩に沈んで行く夕日 |
阿弥陀岳の肩に沈んでいく夕日を眺め、満点の星空を堪能し、明日の快晴を確信しつつ、午後8時には寝てしまうSM君でありました。
2日目は夜明け前に起床。
金峰山横から出てくる御来光を見ながら朝食である。素晴らしい!
雲海に浮かぶ富士山を見ながら、山荘を後にする。
夜明け前の富士山がきれいだ |
いよいよ御来光 |
金峰山の左側から登る朝日 |
朝食風景 |
山荘なので仕方ない朝食 |
個室にも朝日が登る |
まずは赤岳である。
まだ疲労がないので、余裕のよっちゃんで、ぐいぐいと岩綾を登っていく。
赤岳を目指す |
岩稜に苦しむSM君 |
赤岳直下の頂上山荘は閉鎖中 |
雲海に富士山が浮かぶ |
数人の登山者をぶっこぬき、40分ほどで山頂に着く。
八ヶ岳最高峰赤岳(2,899m)の山頂に立つ。
視界は360度。今日も快晴である。
頂上はもうすぐだ |
赤岳2,899mに立つ |
まだまだ元気なSM君 |
南アルプスを望む |
北八つ方面を見る。右端は展望荘 |
阿弥陀岳の直登ルートが見える |
稜線上の中岳(2,700m)を順調に超え、阿弥陀岳直下のコルにて休憩。
右下に保護色のイワヒバリ |
とりあえず赤岳を一度降りる |
稜線の途中にある中岳 |
赤岳を振り返る |
権現岳と右に編笠山が見える |
中岳に到着 |
いよいよ阿弥陀に取り付く |
ここからは阿弥陀岳への直登である。
岩稜を四苦八苦して越えて行く。
午前9時20分。
遂に阿弥陀岳山頂(2,805m)に立つ。
阿弥陀岳(2,805m)に到着 |
山頂は今日は空いていた |
阿弥陀南陵の道標 |
そういえば、SM君がわざわざ前日に購入してきた、ヘルメットの出番がない。
当初、私は必要性を全く感じず、ヘルメットを装備表に加えていなかったが、長野県はアルプスや八ヶ岳への登山にはヘルメットを推奨している。と言うことを聞きつけたSM君が「ヘルメット!ヘルメット!」とうるさい。
ヘルメット被るのが岳人。とでも勘違いしたのだろうか?
そんなに被りたければ、工事現場でバイトでもすればいいのに。
あまりにうるさいので私もザックにくくりつけてきたが、ヘルメットと雨具は今回は出番なし。
阿弥陀南陵を攀じるわけじゃあるまいし。
せっかく持ってきたのだから岩稜地帯で装着すればいいのに、一度も被らないでやんの。
実際にはヘルメット被っている人も3割くらいはいましたが、役に立ったのか知らん。
今回は寛容の精神を発揮し、ヘルメットの出番を作ってあげることとした。
ヘルメット(借り物)かぶってみた |
私が持ってきました |
ここからも展望は良く、富士山から、南アルプス、中央アルプス、御嶽山、北アルプスと日本の中核の山々が全て望めるという絶景である。
昨日今日と台風一過で快晴に恵まれ、夏山と同様の登山が楽しめたことに感謝。
まだまだ富士は雲海に浮かんでいる |
富士山も今日は登山日和だなあ |
南アルプス北岳も見える |
御嶽山 煙はあがっていない |
少し見えにくくなってきた槍穂 |
大学1回生の6月。
暴風雨の黒百合平で幕営し、シュラフは水に浮かび、テントが飛ばないようポールを押さえ、泣きながら「岳人の歌」を歌っていたのが、私が八ヶ岳に足を踏み入れた最初である。
あれから、数十年の時を経て、ようやくこの阿弥陀岳で全山完踏である。(実は西岳は登っていないが、あそこは八ヶ岳に入るのかな〜)
阿弥陀南陵を眺め、もう一度360度見回し、下山を開始する。
ここで絶景ともお別れである。
尾根沿いを八ヶ岳山荘まで降りるだけのルートであるが、残りコースタイムは4時間強と長い。
降りはじめて分かったが、阿弥陀岳への登りの岩稜もシビアであったが、この下りの道はもっと険しく厳しかった。
岩稜が苦手なSM君、大苦戦である。
行けども行けども岩稜は続き、完全な夏空に汗が噴く。
阿弥陀岳南陵 行けそうな気がしちゃった |
岩場に苦戦するSM君 |
そろそろ見納めの山々 |
ヘロヘロで降りてくる歩荷志願兵 |
事前の調査で不動清水まで行けば良い水があるのを知っていたので、携行する水は最小限に抑えた。
厳しい下りも2時間ほどで終わり、手持ちの水が亡くなる頃に不動清水に到着。
冷たい良い水であった。
水を補給し、さらに降る。
ここからは普通の山道となったので岩稜地帯ではヘタレていたSM君も元気が出てきたようだ。
12時30分。昼食を摂ったのは御小屋山。
展望荘で作ってもらったお弁当を食べる。ま、こんなもんだろ。
同じルートを辿る唯一の4人組パーティが追いついてきたのでさあ出発。
ここの標高は2,137m。
まだ600m降りなければならん。先は長いぞ。
そろそろ樹林帯に入る |
山といっても標識一本あるだけ |
今日のランチは山荘のお弁当 |
普通の山道となる |
そろそろ終点も近い |
無事登山口に到着 |
14時30分。
車を止めてある八ヶ岳山荘に到着。
駐車場付近が何やら救急車や消防車で騒がしく、「出車はしばらく待ってくださいとのこと」
事情は本稿とは関係ないので、省略する(SM君にでも直接聞いてください)が、30分以上待たされ、ようやく脱出。
着替えもできないまま、早々に離脱する。
道の駅小淵沢の日帰り天然温泉「延命の湯」で、汗を流し、取り急ぎ中央道に向かいながら、今回の八ヶ岳登山は終了である。
帰宅後、これといった怪我はなかったが、筋肉痛が結構ひどく、日頃のトレーニング不足を露呈した。
また、今回は道に迷うこともなく、歩荷志願兵にも若干の進歩が見られた。
もっとも快晴の稜線歩いて、道迷う人ってあまりいないような気もするが。
<山行記録>
日程:2021年10月3日(日)~4日(月) 1泊2日
同行者:SMさん
天候:両日とも快晴、一時ブロッケン
当初計画
1日目;
美濃戸山荘(9:30)-行者小屋(11:30)-発(11:40)-中岳コル(12:40)-発(12:50)-阿弥陀岳(13:15)-発(13:30)-中岳コル(13:50)-発(14:00)-赤岳(15:00)-発(15:20)-赤岳展望荘(16:00)
<赤岳展望荘泊>
2日目;
赤岳展望荘(6:30)-(空身)-赤岳(7:15)-(空身)-発(7:30)-赤岳展望荘(7:55)-発(8:10)-横岳(8:55)-発(9:05)-硫黄岳(10:05)-(昼食)-発(10:20)-赤岩の頭(10:35)-赤岳鉱泉(11:55)-発(12:05)-堰堤広場(13:05)-発(13:15)-美濃戸山荘(13:45)
変更計画
1日目;
美濃戸口・八ヶ岳山荘(8:30)-美濃戸山荘(9:30)-発(9:40)-行者小屋(11:30)-(昼食)-発(12:30)-地蔵の頭(13:55)-発(14:05)-赤岳展望荘(14:10)
<赤岳展望荘泊>
2日目;
赤岳展望荘(7:00)-赤岳(7:45)-発(8:10)-(中岳経由)-中岳コル(9:10)-発(9:20)-阿弥陀岳(9:45)-発(9:15)-不動清水(10:35)-(昼食)-発(11:30)-御小屋山(12:40)-発(13:10)-美濃戸口・八ヶ岳山荘(14:20)
コースレコード
1日目;
美濃戸口・八ヶ岳山荘(8:35)-美濃戸山荘(9:35)-発(9:45)-休憩(10:45)-発(10:55)-休憩(11:50)-発(12:00)-行者小屋(12:15)-(昼食)-発(13:10)-休憩(14:15)-発(14:20)-地蔵の頭(14:35)-(SM君単身で横岳登頂)-発(15:40)-赤岳展望荘(15:45)
<赤岳展望荘泊>
2日目;
赤岳展望荘(6:45)-赤岳(7:25)-発(7:40)-中岳(8:30)-発(8:35)-中岳コル(8:45)-休憩(9:10)-発(9:15)-阿弥陀岳(9:20)-発(10:00)-休憩(10:45)-発(10:50)-不動清水(11:30)-発(11:45)-御小屋山(12:25)-(昼食)-発(13:20)-美濃戸口・八ヶ岳山荘(14:30)
実歩行時間
1日目;4時間35分(コースタイム:4時間30分)+(SM君のみ1時間)
2日目;5時間20分(コースタイム:6時間10分)
阿弥陀岳山頂から権現岳方面 (富士山から北アルプスまで写っています) |