2011.8.20 【安達太良山山行】 前線を逃れ北へ

当初は、8月20日の週末に1日休暇を加えて、北ア表銀座をやるつもりだった。
この8月の猛暑と晴天はもう少し続くと思っていた。
しかし、8月第3週になり、長い間北方にあり、S君の北海道1周旅行を邪魔していた停滞前線がいきなり南下。(8月初旬から、S君は長期夏季休暇を利用し、北海道ほぼ1周旅行に出掛けている)
20日の週末は、しばらくぶりの荒天が予想された。

まず、小屋泊の山行を断念し、前線南下後の北側を狙う日帰り山行に切り替える。
一番天気の良さそうな日を狙う作戦だ。
次に長野方面の天気は思わしくないので、行き先を新潟方面に変更。
この時点での有力候補は同行のH君の提案で八海山とした。

19日になり、新潟方面の天候も悪化する。
これでもまだ週末の山行をあきらめきれず、天気の良さそうな地域を模索。
日程を比較的天候の良さそうな20日と決め、とりあえず、思い切って北上することとする。

ということで、高速道路からのアプローチがスムーズな安達太良山にターゲットを絞り込む。
しかしながら、表銀座、八海山の山行計画は作ってあったが、安達太良山については「山と高原地図11」は持っているものの、全く計画なし。地図すら見ていない。
ひさびさの無計画登山となったのである。
午前5時。低く雨雲の垂れこめる自宅をH君とともに出発。
とりあえずナビは「あだたら高原スキー場」にセット。
東北道をひたすら北へ向かう。
二人の期待通り、北へ向かうほど天候は回復し、前線から離れて行くことを実感する。

東北道あだたらSAから見上げると安達太良連峰の稜線がクリアに見える。雲は多いが稜線上の視界は良好と想定。
東京から270km余り北上してきて大正解。

9時前にあだたら高原スキー場の駐車場に着く。
予想に反し、多くの車が止まっている。大型バスも2台。いずれも安達太良山登山のようである。
大型バスはともかく、自家用車の人達は我々と同じような考えの人が多かったのであろうか?
あだたらエキスプレスで雲上に出るはず?
登山準備を整え、「あだたらエキスプレス」と名付けられたゴンドラリフトに乗る。片道900円なり。
麓の駅で貰った「安達太良連峰登山地図」を眺めながら、ゴンドラの中で初めて今日の登山コースを相談する。

今日のコース(予定)
山頂駅→安達太良山→牛の背→船明神山→鉄山→箕輪山→鉄山→牛の背→くろがね小屋→駐車場
コースタイムは6~7時間か?

ゴンドラリフトは雲の中をあっという間に標高1,350mの薬師岳山頂駅に到着。
山頂駅には、「夏の思い出。誰でも行ける絶景のあだたら山トレッキングツアー」参加者の団体さんでごった返していた。(ツアー名は適当です。)
この団体の後ろについてはいろいろと大変なので、休憩とか準備体操とかをはしょり、すぐさま登山開始。
雲は低いがまだ雨は降ってこない
樹林帯の中を整備された「ベタ貼り木道」を昇っていく。
樹林帯を抜けるとようやく普通の山道となり、勾配も急になっていく。
1,600mあたりで森林限界を超える。これは高度が上がったと言うよりも、火山灰しかないので植物も育たないということで森林が限界となったと推定。
安達太良山 山頂の乳首と呼ばれる岩峰
山頂の札は結構低い所にあります
と思っているうちに安達太良山山頂にあっけなく到着。
時刻は10:45分。1時間余りの登りであった。
乳首と呼ばれる岩を登り、標高1,700mの最高地点に到達。
ガスが掛かっており遠くまでの展望はのぞめないが、それなりの高度感を楽しめる。
岩峰には立派な「八紘一宇 紀元2600年」の石碑が。。。(解説省略)
山頂に立つ!
しばらく休んでいると地元高校生の団体が次々に昇ってきて、俄然にぎやかに。
我々は次の峰へ移るとしよう。

ゴンドラの中で知ったのだが、最高峰は安達太良山頂でなく箕輪山(1,728m)。
その最高峰箕輪山と、今しがたチラッと姿の見えた船明神山へ向かうことにした。
まずは船明神山へ。
船明神山への道は主稜線を離れ、爆裂火口の外輪山を廻る。
稜線上に人が見える
この行程は終始ガスっていて、絶壁以外は眺望なし。さらにクマの糞なども落ちていて、結構スリリング。
登山道の端は結構 キレキレ
おそらく小型のツキノワグマのかも
分岐から20分ほどで船明神山と思しきあたりに到着。周囲を探索するも明確な頂上を示す印がない。濃いガスのため視界もないので、勝手にここが頂上と決めて退散。(後でガスが晴れ、全景が見える。真の頂上は我々が頂上と決めた地点から50mほど北西だった模様。細かいことは気にしない。)
船明神山山頂付近を迷う登山者
主稜線に戻り、箕輪山方面へ向かう。
途中、1,673mのピークや鉄山を越していく。
鉄山(1,709m)でしばし休憩した後、下に見える避難小屋へ向かう途中で雨が降り出す。
♪求むる小屋の在りか♪  は あそこだ
稜線に立つ避難小屋
もう昼過ぎだし、この後の天候回復も望めそうにないこともあり、このあたりで引き返すことを検討。
ただし、H君の提案で避難小屋にて昼食を摂ることに決定。
後から考えれば、実はこれが大正解であった。
小屋の前に咲く ヤマハハコとハクサンフウロ
鉄山避難小屋に着いたのは1時ちょっと前。稜線上に立つきれいな小屋である。周りには種々の高山植物が咲いている。
冬は積雪のためドアが開かないとのこと。
小屋の中も避難小屋としては、文句のないレベルの清潔さである。
先客がいるが、雨が強くなって来たので雨具を着込むために寄ったとのこと。
彼が雨の中を出て行った後、雨脚は一段と強くなり、小屋の屋根を叩く音が激しくなってきた。
H君持参の新兵器SOTOのバーナーが文字通り火を噴く。噴きすぎてガソリン噴出。こわ~~!
なにはともあれ、暖かいコーヒー付き昼食が頂けた。感謝。
きれいな小屋の内部
昼食を済ませ、この後の行程を検討する。
雨が強くなってきたこと、展望が望めないことを踏まえ、箕輪山は断念。ここから引き返し、くろがね小屋経由で下山することとする。

1時半過ぎに雨具を着込み完全装備で小屋を出る。
私が「大体、雨具着ると止むんだよな~」と言うとH君も同意。
予想通り、しばらく歩くと雨は小降りになり視界も明るくなってくる。
安達太良山 爆裂火口全景

雨もやみ 鉄山もきれいに見える

くろがね小屋方面 福島市も遠くに見える

安達太良山を背景に
鉄山、1,673mのピークなどで景色を楽しみながら、牛の背分岐まで戻る。
この頃には、ガスもかなり晴れてきて、雨も止む。
昼食休憩を鉄山避難小屋で1時間近く取ったため、その間に天候が回復。あのまま歩き続けなくて大正解。

雨具を脱いで、登山口までの下りに突入。
安達太良山に別れを告げ 下降に

こっちに行くと「岳」が居るんだよ きっと
往復ともゴンドラ利用という手段もあったのだが、下りくらいは自分の足でと考えたのがいけなかったか。標高差にして700m程度の下山であるがこの下りは結構シビアであった。
後で「山と高原地図」で確認すると「このコースは雨天時は滑りやすいので林道を歩いたほうがよい」と記載されていた。
コバキボウシの大群落がそこここに

どろどろの山道からようやく林道に入る
火山灰が粘土化した下り道は、ひとたび雨が降れば完全に川となり、どろどろで極めて滑りやすく、下山は難航苦行であった。
時間を稼ぐために、くろがね小屋を経由しない山道を選択したのも苦戦の要因であった。
この下山道は結構時間を取られ、結局、麓の駐車場にたどり着いたの16時を過ぎてしまった。
ようやくあだたら高原スキー場に到着


ゴンドラ駅に到着 これにて本日の登山終了
今回は恒例となっている帰りの温泉もパスし、東北自動車道に乗り、帰りを急ぐ。
あだたらSA付近で見上げると安達太良連峰に雲は掛かっておらず、くっきりと稜線が見えていたのであった。
SAから見ると晴れてるぞ 安達太良山
今回の山行は、当初の計画をあきらめての無計画な山行となってしまったが、山容がアルプス的だったこと、また風景が特殊だったこと、ガスの中の歩行もなかなか面白かったこともあり、まずは成功と言えるであろう。
連峰の最高峰を逃したことだけが、ちょっとだけ残念ではあるが・・・

帰りの車の中でH君と「次は西穂からジャンか、雲の平か、剱の早月尾根じゃねえの?」とまあ勝手な話で盛り上がりながら、渋滞もなくスムーズな東北道を南下したのであった。

<山行記録>
日程:2011年8月20日(日) 日帰り

同行者:Hさん

天候:曇り時々雨と霧

当初計画:なし

コースレコード:あだたら高原スキー場P(9:10)-安達太良高原駅(9:13)-あだたらエキスプレス(9:16)-薬師岳山頂駅(9:24)-表登山口分岐(9:59)-安達太良山山頂(10:45)-船明神山分岐(11:12)-船明神山ニセピーク(10:10)-船明神山分岐(10:20)-鉄山(11:50)-鉄山避難小屋-昼食(12:00)-1,673mのピーク(12:10)-牛の背分岐-(12:40)-峰の辻(12:00)-馬車道分岐(12:10)-あだたら高原スキー場P(12:40)

実歩行時間:5時間5分