2016.5.8 【北アルプス 唐松岳山行】GW最終日、今年最後の雪山アタック完了

唐松岳は、北アルプス・後立山連峰にある標高2,696mの山である。
唐松岳より、北アルプス・立山連峰から槍穂方面を望む
とくに白馬岳や立山連峰、剣岳の展望が良く、人気の山である。
山頂から延びる八方尾根が、最も容易な登山コースで、初心者でも安心して高山を楽しめるそうである。
八方アルペンラインリフトが利用できるため、標高1,830mまで一気に上がることができる。
山頂までは標高差900m弱となり、夏山のコースタイムは、登りが3時間50分、下りが3時間15分、合計7時間5分である。
写真はすべてクリックで拡大します
今年の積雪期登山の最後の登山として選んだのが、この唐松岳である。

本来、アルペンラインは6月から営業が再開されるが、このGWのちょうど今日8日までは冬季営業期間中ということで利用可能。
既述したが、アルペンラインは、5月2日から6日までは悪天候で営業を停止していた。
昨日、ようやく動いたようだが、それも今日で営業終了である。
八方尾根で利用できるアルペンラインのリフトは3本。八方ゴンドラリフト「アダム」、アルペンクワッドリフト、グラートクワッドリフトである。
往復で2,900円と少々お高いが、3本で標高差1,000m以上も登ってくれるのでありがたや、ありがたや。


頂上直下に唐松岳頂上山荘があり宿泊可能であるが、そこの営業もGW期間だけであり、本日が小屋閉め最終日である。
ということで、本日は行けるところまで行って、必ずリフトの動いている時間内に戻って来なくてはいけないのである。
我が隊はタイムリミットを13時と設定する。
つまり、13時にどこにいようと、たとえ頂上付近まで辿り着いていようと、折り返すことを決める。
旧世代の岳人はシビアなのである。
リフト使いやがって何言ってんだ!とは言ってはいけません。

最上部のグラートクワッドリフトの終了時刻が4時10分ということなので、9時前に出発して、コースタイム(7時間)どおりに歩くとすると、昼食時間もないくらいギリギリの時間である。
なんらかのアクシデントや最近のヘタレ具合を考えるとやはり13時の折り返しは守らなくてはならないだろう。

さて、7日夜から天気は見事に恢復し、星空となる。
8日朝。天気は快晴。日焼け止めは必携の上天気だ。
早朝、旅館の前から
昨夜中におおかたのパッキングは済まし、朝食バイキングをバカ食いし、宿を7時半すぎに出る。
車を3分走らせ、リフト直下の八方尾根駐車場(1日600円)にとめ、リフトの始発を待つ。
すでにリフト待ちの長い列ができている。H君がリフト券を買いに行っている間に列の人数を数えると50人程。
アルペンラインは長蛇の列
全員、山支度である。
もっとも、黒菱ゲレンデにも、兎平ゲレンデにももう積雪はないので、スキーヤーなどいるはずもないのですが。
8時ちょうどにリフト「アダム」運行開始。
我々も8時5分には乗車することができた。
八方ゴンドラリフト「アダム」
2回乗り換え1,830mの終点、八方池山荘・第一ケルンに8時40分には到着した。
グラートクワッド頂上駅
八方池山荘
時間もないので、すぐに登山を開始。
天気は無論、無風快晴の完璧な登山日和である。
で出しはゴロゴロ岩の登山道。雪は全くなく完全な夏道である。
まずはゴロゴロ岩の道を行く
長い木造の階段を登り詰めるとほどなく、第2ケルンに到着。標高は2,000mを超える。
通常、北アルプスの森林限界は2,200m近辺なのだが、この八方尾根では1,700m付近から上は既に樹木はなく、高山植物帯に入っているとのこと。
地質が「蛇紋岩」でできているのがその理由らしいが、まあ、この方が、景色は良いので問題ないのである。
第2ケルン これから登る雪山が見える
数多くのアルプスを舞台にしたドラマや映画が、ここで撮影されている。
私の好きなのは、「北アルプス山岳救助隊・紫門一鬼」シリーズ。
エンディングで必ずと言ってよいほど出てくる渡瀬恒彦と高嶋政宏が白馬岳を背景にコーヒーを飲んでいるシーンは必見である。
左手に五竜岳 
右手に白馬岳
第2ケルンを越えたあたりで、ようやく雪が出てくる。
八方ケルンへの登り斜面は完全な雪面となる。
不帰嶮の峰々  切戸凄すぎ~~
雪原を行く
白馬三山
ドラクエ歩きの登山者の群れ
するとなんと大多数の登山者が斜面下にて、アイゼンを装着しているではないか。
我々は、装着し続けている20名ほどの登山者を横目に躊躇なく足早に雪面に取り付く。
案の定、シャリシャリの雪面にステップが綺麗についており、非常に登りやすくなっている。
たしかに安全確保のために、早めにアイゼンを着けることは推奨されているが、これはいくらなんでも早すぎ。
先行しているパーティも無論ノーアイゼンである。
実際のところ、ノーアイゼンはジジイ登山者が多かったようだ。
良く言えば、経験値が高いため、アイゼンの装着のタイミングを知っていると言うことですが。本当は、装着するのが面倒くさいし、重くなるし。ってことでいいですか?H君。

八方ケルン、第3ケルンとノーアイゼンで快調に踏破していく。
唐松岳山頂はまだ遠い
天気は快晴 登りは暑い
今年は雪が少ないです
振り返ると結構な斜面だ
景色はもちろん素晴らしいの一言。
進行方向の右には白馬(決してハクバなどと読まないで下さい)三山を始め、不帰嶮(カエラズのケンと読んでください)の3峰。
左手には五竜岳、鹿島槍ヶ岳の北アルプスの峰々。
これぞ稜線を往く醍醐味です。

白馬の峰々
白馬三山(白馬鑓ヶ岳・杓子岳・白馬岳)
ドラクエ歩きは続く

10時50分。丸山ケルンに到着。最後のケルンである。
そう言えば八方尾根には6つのケルンがあり、どれもランドマークになっています。
こういう尾根では、霧が出たりするとルートをロストしやすいので重要な目印になっています。
丸山さんちのケルン
五竜岳も全容が見えてきた
このあたりで3人組の下山パーティに出会う。
唐松岳頂上山荘に宿泊していたとのことである。
「昨日入山したのか?」と問うと答えは、「大分長いこと泊まっていた」と一言。
リフト休業となる5月2日以前から頂上山荘にいたと云うことであろう。今日ようやく下山できた訳である。ご苦労様。
第二の問い「ここから先、アイゼンは必要か否か?」「頂上からノーアイゼンで降りてきた。午後気温が下がったら必要かも知れぬ」
我々はこの会話で、登りは全くアイゼンが不要であることを悟るのである。
山男の会話はこうでなくてはいかんね。
「ピッケルは必要ですか~~~?」とか「唐松岳って百名山なんですか~~?」とか「穂高ってどこですか~?」「ハクバって綺麗!!」などという不毛な問いかけは絶対にしないのである。(これらは実際に聞かれた質問です。山に来るな!!)
斜面は急になってくる 

落ちたら終わりのトラバース中
途中ですれ違った下山者は7,8人か。
つまり、昨晩は頂上山荘はガラガラであったのです。
飯綱山なんて登ってないで、昨日のうちに頂上山荘まで登っていれば、今朝絶景の日の出を見ることが出来たのに。
と、一瞬頭をよぎるが、すぐ忘れることにする。

丸山ケルンを出て、標高2,500mを超えたあたりの最後の急登に掛かると、白いモノが右手の崖をよぎる。
出たぞ、出ましたぞ。しかもこんな晴れの日によく出てくれましたね。
冬毛から夏毛に変わろうとしてるライチョウが1羽雪の崖を登っていく。
崖っぷちを追いかけて行ってが、なかなか良い写真が撮れない。もう本当に崖っぷちなのであきらめる。
実はH君がちゃんと撮ってくれていたのに、私の無謀な行動にH君ちょっと怒っていたようだ。
ライチョウさん登場  H君写
急斜面を駆け上っていく H君写 くそ〜〜
最後の急登を登りきると頂上山荘だ。
ここまで来ると景色が一変する。立山連峰が見えてくるのである。
我々は休まずに頂上を目指す。早く山頂に立ち、北アルプスの絶景を見たいのである。
唐松岳山頂へ急ぐ
もうすでの多くの登山者が登っている
いよいよ、唐松岳絶頂に12時5分に到着。
周囲を見回す。しばらくの間、声もなく見ているだけである。
剣立山連峰から、ちょうど槍穂高まで来たアルプス主要部はすべて展望できる。
山頂は寒くはないが、少し風があるので昼食は頂上山荘の辺りで食べることにし、唐松岳山頂を堪能する。

登頂成功を喜ぶH君
唐松岳山頂到着 
ピッケルは撮影用に持参
山頂は積雪0
実はこんなにドラクエ登山者が
白馬連峰
剣岳もくっきり見える
妙高山と噴煙を上げる焼岳
立山連峰の奥に見えるは槍ヶ岳か
ちなみに私がフードを被っているのは防寒のためではなく、防日差しのためです。
昨日の日焼けで首筋がひりひりするので、これ以上の日焼けをしたくなかったのです。

いつまで見いていても見飽きないが、お腹も空いたし、下山時間も心配なので引き上げることにする。
着いた時は20人ほどいた登山者も、もう殆どが下山を開始している。
さらば、剣・立山、白馬よ、また来る日まで待っててね。
剣岳をもう一度見ちゃう
穂高と槍ももう一度見ちゃう
我々は頂上山荘のそばにあるヘリポートにて食事。
整地されたヘリポートと頂上山荘
ここまでの行程から、出発時刻を13時30分とする。
コーヒーなどを沸かし、恒例のゆっくりランチタイムである。
今日の昼食
山頂を見やるとまだまだ登っていく登山者が多くいる。
彼らは帰りのリフトの終電に間に合うのかな~~
ヘリポートから唐松岳を振り返る
H君が小用で山荘へ行くと、山荘の管理人のおじさん達が小屋閉めを終わり、下山準備をしていたとのこと。
彼らも最終リフトで下山するのだ。

このルートの唯一の難点は、トイレが無いことですね。
全工程中、この頂上山荘しかトイレはありません。
しかも、見晴らしの良い尾根道なのでなかなか大変であります。

13時25分。名残は尽きねど、下山の時である。
帰りはノーアイゼンなので、雪の斜面を滑るように下っていける。
アイゼン組を牛蒡抜き、相当な速さで駆け下る。
下りは早い


そろそろ雪道ともお別れだ
H君が私に「今日は調子良さそうだね」と声を掛けてくれる。
やはり、最近の私のヘタレぶりは目に余るものがあったのだろうな。
確かに今日は足も痛まず、ヘタレもせず、登りも下りも良い調子である。

八方池のある第3ケルンまで休みなく一気に駆け下りる。
時間が余ったのでここで大休止。
八方池も花の季節の絶景は有名であるが、今日はまだ、雪に埋もれている。
それでも白馬三山を望む景色は素晴らしいのである。
第3ケルンから白馬連峰を望む
ここでコーヒーを飲むのが夢だった。
実は暑いのでTシャツなのでした
あとは八方池山荘まで一直線。
15時9分にリフト乗り場着、今回の山行は完了である。
1時間45分ほどで駆け下りちゃったのでした。
八方池山荘が見えた。もうすぐ終点だ 
最後に来た道を振り返る
今日は反省すべき点は、珍しく「なし」としよう。
久々の完璧に近い山行でありました。
そして、これで今季の雪山山行は終了です。

ここからは、残雪期あるいは夏山登山の季節に入るのであります。

<山行記録>
日程:2016年5月8日(日) 日帰り
同行者:Hさん
天候:快晴

当初計画:八方アルペンラインリフト(8:00)-(リフト)-八方池山荘・第1ケルン(8:45)-第3ケルン(9:45)-唐松岳頂上山荘(12:15)-唐松岳(12:35)-発(12:45)-唐松岳頂上山荘(13:00)-第3ケルン(15:00)-八方池山荘(16:00)

コースレコード:八方尾根駐車場(7:40)-八方アルペンラインリフト乗車(8:05)-(リフト)-八方池山荘・第1ケルン(8:38)-発(8:40)-第2ケルン(9:00)-発(9:03)-八方池・第3ケルン(9:20)-発(9:30)-扇雪渓下(10:22)-発(10:31)-丸山ケルン(10:50)-2,500m地(11:05)-発(11:10)-頂上山荘(11:50)-唐松岳(12:05)-発(12:28)-唐松岳頂上山荘・ヘリポート(12:45)-(昼食)-発(13:25)-丸山ケルン(13:48)-八方池・第3ケルン(14:27)-発(14:45)-八方池山荘・第1ケルン(15:09)-リフト乗車(15:13)

実歩行時間:4時間41分
唐松岳山頂で、心静かに剣岳を眺める